高齢者も安心できるトイレとは?リフォームのポイントと補助金を紹介
2019.12.17
高齢の方がいるご家庭では、安全性を考慮してトイレのリフォームを検討されているのではないでしょうか。リフォームを実践すれば、高齢の方だけでなく家族全員の生活を快適にできる可能性もあります。高齢の方のことを考えたトイレリフォームについて、ポイントを解説します。
高齢の方向けにあると便利なトイレの設備
ご家族に介護が必要な方がいる場合、介護のために自宅のリフォームをすることもあるかもしれません。
または介護が必要というほどではなくとも、年齢を重ねてだんだんと足腰が不自由になってくると、日常生活で不自由を感じることもあるでしょう。歩く、座る、立つといった何気ない動作であっても、転倒して怪我をしてしまうこともあるのです。特にトイレはそうした動作が狭い空間の中にすべて詰まっており、まず生活の不自由さを感じやすいところです。
そのため高齢の方向けにトイレをリフォームするのであれば、以下のような設備があると便利です。
高さを調整するための補高便座
補高便座は数cmではあるものの座面を高くすることができ、立ったり座ったりする動作を補助します。和式便座の上にかぶせることで腰掛け用に変更するというタイプの補高便座もあります。
数万円程度で市販されていて、簡単に設置が可能です。
長時間座っていても疲れない柔らかい素材の便座
便座の上に長時間座ることがある場合は、便座にクッション性の高い後付け便座を設置するのがおすすめ。座り心地が良くなるだけではなく、水洗いができ清潔さを保てるようなものもあります。
数千円から1万円以下で販売されていて、便座の上に置くだけで設置が可能です。
立ち上がりを補助する上昇便座
立ち上がるときの動作そのものを補助したい、トイレで介助をするときの負担を軽くしたい、という場合には上昇便座を取り付けると良いでしょう。リモコンなどのスイッチで便座を昇降させることができ、立ち上がりやすい高さで止めることも可能。垂直に上昇するタイプや斜めに上昇するタイプがあり、個人の身体の可動域や座り方、立ち方によって適したタイプが選べます。
設置費用は、製品のグレードやメーカーによって異なりますが、10万円から20万円程度と考えておきましょう。
壁付けの手すり
手すりを掴むことによって、しっかりと身体を支えながら体重移動ができ、立ち座りの動作が楽になります。I字型の手すりもありますが、高齢の方向けのトイレのリフォームでは、L字型の手すりがよく用いられます。体重移動ではなく座っているときに支えにしたい場合には、手すりを便器で固定するタイプもあります。
手すりの取り付けにかかる費用は、壁の補強費用も込みで5万円から10万円程度です。
背もたれやひじ掛け
腰掛ける動作が心配な場合、便器に背もたれを付けることも可能です。足腰が弱っていると便座に座るときに勢いよく座り込んでしまうことがあります。本人への衝撃を緩和することはもちろん、背中に当たる蓋の部分や便座の破損を防ぐことにもつながります。
手すり付きのもので数万円から入手でき、床にビス止めして固定するため、自分での設置も可能です。
ご家族が日常生活を安全に、そして快適に過ごすことができるよう、今すぐに介護の必要がなくとも、将来の備えとして選択しましょう。
トイレでも起こり得るヒートショックの危険性と対策
ヒートショックとは何か
ヒートショックとは、気温の変化によって血圧が急激に変化することで、体に負担がかかる現象のこと。失神して転倒やお風呂での溺水を招いたり、心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こしたりして、多くの死亡者が発生しています。特に外気温がぐっと下がる冬の時期に多く発生し、高齢の方や持病を持っている方などに起こりやすいとされています。
トイレでヒートショックが起きやすい理由
冬場に温かい居室からトイレへ行ったとき、室温の変化に思わず身震いした経験があるのではないでしょうか。一般的にトイレには暖房器具が設置されていることは少なく、居室との温度差は10度近くになることも。またトイレでは、排泄時に身体に力が入ることで血圧が急上昇しやすいため、ヒートショックになるリスクが高いとされています。
トイレにおけるヒートショック対策
・窓からの冷気を遮る
窓から入る冷気は、室温を下げる大きな原因です。窓に市販の断熱シートを貼ったり、遮熱機能付きのカーテンをかけたりすると保温性をアップできます。また、断熱性に優れた複層ガラスや樹脂フレームの窓に交換したり、内窓を取り付けて二重窓にするとより効果的です。
・室内暖房を設置する
人をセンサーで感知して温風を送る小型の暖房器具や、ヒーターの機能が付いた天井照明などトイレに適した暖房器具があります。冷気を遮るとともに、トイレ内を温める工夫を行いましょう。
・暖房便座を使用する
冷たい便座に肌が触れることでもヒートショックは起こりやすくなります。便座を温かく保温する暖房便座に交換すれば、便座カバーをつけていなくても寒い思いをすることがありません。
ヒートショックを防ぐためには居室とトイレの気温差をなるべくなくすことが有効です。トイレのリフォームを考えている場合、同時にヒートショック対策にも意識を向けてみてはいかがでしょうか。
高齢の方向けに行うトイレリフォームのポイント
高齢の方が利用することを前提としたトイレのリフォームを行う場合、事前にしっかりと計画を立てておくことが大切です。確認しておきたい点としては、以下のようなものがあります。
ゆとりあるトイレスペースの確保
トイレで介助をする場合には、一人分のスペースを確保する必要があります。
一般的にトイレ室内は、便器の横幅に加えて30cm、奥行きは便器の前方から40cmのスペースが確保されていることがほとんど。最低限の広さしかない場合は、横幅に60cmから100cm、奥行きに85cmほどのゆとりあるスペースを作れないか考えてみましょう。
トイレスペースを確保するために、タンクレストイレに変更するという方法もあります。タンクが不要となる分、従来のトイレと比較すると奥行き方向にスペースを確保することが可能です。ただし、タンクレストイレは水圧を使って洗浄を行うことから、水圧が低い場合には利用できない可能性があるため注意しましょう。
また、トイレのドアが内開きの場合、せっかくトイレ内にスペースを作っても、ドアが邪魔になり出入りに影響が出てしまうこともあります。移動の範囲を少なくできる引き戸への変更がおすすめです。
コンセントの位置と容量
トイレで暖房器具や温水洗浄便座などを使いたい場合、コンセントの位置や容量に注意が必要です。暖房便座では300Wから500W程度、温水が出るタイプの便座であれば1,000Wから1,400W程度の消費電力が必要になる場合があるので確認しておきましょう。温水洗浄便座には貯湯式と瞬間式があり、瞬間式に変更予定の場合は特に注意が必要です。コンセントのボルト数を上げる工事も1万円以内でできることがあるため、確認しておきましょう。
床の高さの変化
廊下などとの床の段差をなくしてフラットにする場合、トイレ内の各設備とのバランスが悪くなってしまう可能性があります。ペーパーホルダーや手すりの設置位置、手洗い場や収納棚の高さには気をつけましょう。床の高さを変更した際に使いづらくなるようであれば、こうした設備の高さも変更する必要があります。
トイレのスペースを拡大するなど大幅なリフォームが必要となることもあります。開始する段階になってから困らないように、事前に業者と確認・調整をしておきましょう。
トイレリフォームに利用できる補助金は?
補助金・助成金制度を活用すれば、トイレのリフォーム費用の負担を軽減できます。様々な制度がありますが、ここではその一部をご紹介します。
リフォーム減税制度
一定の条件を満たした場合、投資型減税、ローン型減税、住宅ローン減税のいずれかを利用できます。投資型減税、ローン型減税は手すりの設置をはじめとするバリアフリーの工事で利用可能です。また、ローン型減税は返済期間5年以上のローン、住宅ローン減税は返済期間10年以上のローンを借りて行うリフォームが対象です。
次世代住宅ポイント制度
国土交通省が運営する次世代住宅ポイント制度は、一定の省エネ性、耐震性、バリアフリー性能などをクリアした住宅リフォームをした方が、いろいろな商品と交換できるポイントをもらえる制度です。2020年3月31日までにリフォーム工事を開始する住宅であれば申請が可能で、事業予算枠が上限に達すると終了します。バリアフリー性能では、手すりの設置や段差の解消などが対象工事に含まれています。
このほか、市区町村が運営する介護保険サービスの助成金や住宅改修の助成金を利用する方法もあります。リフォームを計画する際に補助金を活用したい場合は、条件に当てはまるか確認しておきましょう。